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2025.06.11

「分子標的薬」という新しい治療の選択肢

「ステージ4」と聞いて、頭の中が真っ白になった方もいらっしゃると思います。これからどうなるのか、どんな治療があるのか、不安でいっぱいになるのは当然です。

【分子標的薬】

現在、「からだ全体に効かせる治療」だけでなく、「がんの性質を詳しく調べて、その“弱点”をピンポイントで攻める治療」として、【分子標的薬(ぶんしひょうてきやく)】という新しいタイプのお薬を使った治療があります。

今までの抗がん剤は、「がん細胞をやっつけるけれど、正常な細胞にも影響してしまう」ことがありました。副作用が強く出やすいのもそのためです。

一方で分子標的薬は、「がん細胞だけが持っている特徴=弱点」を見つけて、その部分にだけ作用するように作られた薬です。まるで「鍵と鍵穴」がぴったり合うように、がんの“スイッチ”を正確に狙い撃ちします。
だから、正常な細胞へのダメージが少なく、身体への負担も抑えられる可能性があるのです。
でも、「どんな弱点があるのか?」を知らなければ、分子標的薬を使うことはできません。

そこで、遺伝子パネル検査を行います。
これは、がんの組織や血液から遺伝子の情報を読み取り、「この人のがん細胞は、どんな異常を持っているのか?」を調べる検査です。

例えば、ある患者さんのがん細胞が「EGFR(イージーエフアール)」という遺伝子に異常を持っていた場合、その異常を狙った分子標的薬を使うと、高い効果が期待できることもあります。

「選べる治療」がある時代

分子標的薬は、すべてのがん患者さんに効くわけではありません。遺伝子のタイプやがんの種類によって、効果が出るかどうかは変わってきます。

でも、いまは「自分に合った薬を選べる」時代です。

たとえステージ4であっても、
・がんの進行をゆるやかにする
・痛みやつらさを減らす
・生活の質を保つ
といった目的で、分子標的薬が使われるケースもあります。

さらに、分子標的薬は他の治療(免疫療法・漢方・サプリメント・緩和ケアなど)と組み合わせて行うこともあります。治療をあきらめるのではなく、「できることを組み合わせていく」ことが必要と考えています。

最先端の治療も、「あなたに合うかどうか」がいちばん大切

最先端の治療も、「あなたに合うかどうか」がいちばん大切です。分子標的薬は日々進化しており、新しい薬や組み合わせ方が次々と登場しています。
しかし大切なのは、「最新かどうか」ではなく、「あなたにとって意味のある治療かどうか」です。

がんの弱点を見つけて、自分らしい時間を大切にする。
そんな治療の選択肢があることを知ることが、あなたのこれからの力になると考えます。