―耐性遺伝子から見えてくる、これからの治療について
「最初はよく効いていたのに、最近あまり効かなくなってきた気がする」
「治療を変えたのに、がんがまた進んでしまった」
がん治療では、ある薬が効かなくなってしまう“耐性(たいせい)”という現象が起こることがあります。これは患者さんの体質が原因ではなく、多くの場合、がん細胞の遺伝子に変化が起きたことによって起こることがあります。
なぜ治療が効かなくなるのか、そして「耐性」という現象をどう乗り越えていくのかについて、やさしく解説していきます。
治療が効かなくなる理由
がん細胞は非常にしたたかで、薬によって攻撃されると、生き残るために自分自身の性質(遺伝子)を変えてしまうことがあります。これが「耐性の獲得」です。
たとえば、分子標的薬は特定のがん遺伝子をピンポイントで狙い撃ちする薬ですが、がん細胞が別の機序で増えるように“回避策”を取ると、薬が効かなくなることがあります。これはまるで、通行止めをされた道のかわりに、別の裏道を使って目的地に向かうようなものです。
この“裏道”を作る働きをするのが、「耐性遺伝子」です。
耐性遺伝子はどうやって見つけるの?
こうした耐性の原因を見つけるために使われるのが、「がん遺伝子パネル検査」です。これは、がん細胞の中の多数の遺伝子を一度に調べ、どの遺伝子に変異が起きているかを調べる検査です。
この検査によって、
・なぜ今の薬が効かなくなったのか
・どんな新しい薬が効果を持つ可能性があるのか
・治験(臨床試験)などに参加できる可能性
などが見えてくることがあります。
つまり、「薬が効かなくなった理由」を明らかにすることが、明日の一手につながります。
耐性を乗り越える「明日の選択肢」
耐性遺伝子がわかったあと、治療の選択肢はひとつではありません。
・別の分子標的薬に切り替える
・併用療法でがんの逃げ道をふさぐ
・臨床試験(治験)への参加を検討する
大切なのは、「治療を続けるべきか」ではなく、「今、自分らしく生きるためにどうするか」を家族や医師などと一緒に考えることです。
ステージ4でも、希望をもてる情報がある
ステージ4と告げられると、治療の選択肢が限られると思われがちです。
けれど、遺伝子情報を手がかりにした個別化医療は、まさに“一人ひとりのがん”に合わせたオーダーメイドの治療方法です。
治療が効かなくなった理由がわかれば、諦めずに「次にできること」を見つけることができます。遺伝子の変化は、がんの「弱点」であると同時に、「突破口」になるかもしれないのです。
治療の行き詰まりは、“次の始まり”
治療の効果が薄れてくることは、がん治療の中ではあることかもしれません。でも、それは「終わり」ではなく、「これからどう動くかを考えるタイミング」と考えます。
耐性遺伝子を知ることは、「なぜうまくいかなかったのか」を明らかにし、あなたに合った“次の選択”を見つけるための大切な一歩になります。
当院では、遺伝子解析を踏まえた治療方法のご提案や、セカンドオピニオンの相談も承っています。
どんな状況でも、一人ではありません。あなたともに、一緒に、考えていきます。