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2025.06.23

がん治療を支える漢方治療の役割

「体を整える力」を活かす漢方医療

がんと診断され、とくにステージ4と聞いたとき、多くの方が「どんな治療が受けられるのか」「どこまでできるのか」と不安になるものです。現代医学では、手術・放射線・抗がん剤・分子標的薬などの治療が中心ですが、からだ全体のバランスを整えて“治療を支える”医療にも注目が集まっています。
その一つが、漢方治療です。

漢方は「がんそのもの」を治す薬ではない

まずお伝えしたいのは、漢方薬はがん細胞を直接作用する薬ではないということです。
では何のために使うのでしょうか?

それは、がんや治療の影響で弱ってしまった「からだ全体の力=自然治癒力や抵抗力」を高め、生活の質を守るためです。言いかえれば、「治療を支える地盤を整える薬」とも言えるでしょう。

たとえば、こんなとき

漢方薬は、患者さんの「からだとこころの状態」に合わせて処方が決まります。
がん治療中や緩和ケアの場面で、次のような症状がある方に使われることが多いです

・食欲がない、胃腸が弱っている
・体力が落ちている、疲れやすい
・不安感や落ち込み、眠れない
・むくみ、冷え、便秘などの慢性的な不調

これらは抗がん剤や分子標的薬の副作用を和らげたり、がんと共に過ごす時間をより快適に保つための手段として使われています。

「からだ全体を見る」東洋医学の視点

西洋医学は「がん細胞そのものをどう攻撃するか」に注目しますが、東洋医学は「がんと向き合う体の状態をどう整えるか」に注目します。

たとえば、畑に作物が育つように、漢方は“からだという土壌”を整えて、がん治療がスムーズに進むよう手助けします。副作用で治療を中断せざるを得なかった方が、漢方薬を取り入れることで体調を取り戻し、治療を再開できたケースもあります。

緩和ケアにも活かされる「やさしい医療」

ステージ4のがんでは、治療だけでなく「自分らしく過ごす時間」を大切にする緩和ケアの考え方も重視されます。
漢方は、痛み・不眠・不安・消化不良などの不調を和らげる手段として、緩和ケアの現場でも活用されています。

何より、漢方には「不快な症状をいくつかまとめて整える」という特徴があり、複数のつらさを抱える方にはとても有用です。

しかし、漢方は自然由来とはいえ、体質や治療内容によっては使えない場合や、薬との相互作用がある場合もあります。そのため、自己判断ではなく、がん治療に詳しい医師や薬剤師と相談して取り入れることが大切です。

「がん治療を支える、もうひとつの選択肢」

漢方治療は、がんそのものを治すのではなく、がんと闘うあなたの体を支える「ひとつの選択肢」です。今の治療がつらい方、治療の選択肢に迷っている方、生活の質を少しでも保ちたいと考える方にとって、希望のひとつになるかもしれません。

当院では、漢方を含めた統合的な治療アプローチを大切にしています。どうか、一人で悩まずに、今のあなたに合った選択肢を一緒に探していきましょう。