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2025.08.14

がんとウイルスの関連性

ウイルスが関係するがんって?

がんとウイルスの意外な関係と、そこから見えてくる治療と予防の可能性

がんと診断されたとき、生活習慣、遺伝、環境などさまざまな要因があるとされますが、その中に意外と知られていないものが「ウイルス」との関係です。

ウイルスというと、風邪やインフルエンザの原因という印象が強いかもしれませんが、実は特定のウイルスが、一部のがんの原因になることがあるとわかっています。

がんの約10〜15%はウイルスが関係している?

世界中で発生するがんのうち、約10〜15%はウイルス感染が関係しているといわれています。がんのすべてがそうではありませんが、いくつかのがんでは、原因がはっきりとウイルスに結びついています。

ウイルス名関連するがんの種類
ヒトパピローマウイルス(HPV)子宮頸がん、肛門がん、咽頭がん など
B型肝炎ウイルス(HBV)肝臓がん
C型肝炎ウイルス(HCV)肝臓がん
EBウイルス(EBV)悪性リンパ腫、上咽頭がん など
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)成人T細胞白血病(ATL)

これらのウイルスは、長期にわたって体内にとどまり、慢性的な炎症や遺伝子の異常を引き起こすことで、がん化の引き金になると言われています。

「感染=がん」ではないということを知っておいてください

ここでお伝えしておきたいことは、ウイルスに感染したすべての人が「がん」になるわけではないということです。

たとえば、HPVは多くの人が一生のうちに一度は感染ると言われていますが、その多くは自然に排除され、がんにはなりません。まれに慢性化してがんを起こすとこがあります。

つまり、「感染すること」自体ががんの直接的な原因ではなく、免疫力や体内環境、生活習慣が重なったときに、がんが生まれるリスクが高まるということです。

ウイルス性がんの“手がかり”は遺伝子パネル検査でわかる?

がんの治療において注目されている「遺伝子パネル検査」では、ウイルス感染の影響によって変化した遺伝子の情報が得られることがあります。

たとえば、HPVが原因とされる子宮頸がんでは、特定の遺伝子異常パターン(PIK3CA変異など)が現れやすく、それに応じた分子標的薬の候補が見えてくることがあります。

また、肝臓がんの場合、C型肝炎ウイルスによる肝細胞の慢性的な炎症が、複数のがん関連遺伝子の異常を引き起こすことがあります。これらの情報は、治療方針の判断材料として非常に重要になります。

ウイルスが関係するがんの「治療や予防」はどう変わる?

1.ワクチンによる予防が可能なケースも

    子宮頸がんの原因とされるHPVに対しては、ワクチン(HPVワクチン)があります。日本でも近年、接種の対象が広がり、男性への接種も推奨され始めています。

    男性がワクチン接種することで、HPVへの感染予防が期待できるとともに、男性が感染予防を行うことで、性交渉によるHPV感染から女性を守ることにもつながる可能性があると言われています。

    また、B型肝炎ウイルスもワクチンで予防可能であり、新生児や医療従事者などへの接種が行われています。

    2.抗ウイルス薬の活用

    C型肝炎に対する抗ウイルス薬(DAAs)はとても進化していて、肝炎ウイルスを排除することで肝がんのリスクを下げられるようになりました。

    このように、ウイルスそのものを除去したり、感染のコントロールを行うことで、がんの進行や再発リスクを下げる医療も日々進歩しています。

    がんには“原因”と“可能性”がある

    がんとウイルス
    これは、一見すると縁遠いように思えますが、調べてみるとつながりが見えてくることがあります。
    そして、それが一人ひとりのがんに合った治療を選ぶための手がかりになるかもしれません。

    「どうしてがんになったのか」と思い悩む気持ちは自然なことです。
    でも、そこに“見える原因”があるからこそ、“できること”もまた見つかります。

    一人ひとりのがんに向き合いながら、
    治療と生活のバランスを大切にできるように、
    そう私たちは考えます。