治療の可能性を広げるための「次の一歩」の考え方
がんと診断されたとき、多くの方が「もう選べる治療は少ないのでは」と感じるかもしれません。
しかし、今のがん医療は進歩しています。
なかでも「遺伝子パネル検査」という技術により、がん細胞の遺伝子の異常を詳しく調べ、そこから治療のヒントを得ることができるようになってきました。
では、検査で「遺伝子変異が見つかった」ときに、次にどうすればよいのでしょうか?
「遺伝子変異が見つかった」=「治療法がある」とは限らない?
まずお伝えすることは、「遺伝子の異常が見つかった」からといって、すぐに治療法が見つかるとは限らないということです。
一部の遺伝子異常(たとえばEGFR、ALK、BRAFなど)には、それに合った分子標的薬が存在します。
しかし、まだ対応する薬がない遺伝子変異も多く、「治験(臨床試験)でしか使えない薬」という場合もあります。
つまり、遺伝子の情報はあくまで「治療の可能性を広げる材料のひとつ」であり、それをどう活かすかは、専門的な判断や相談が必要です。
セカンドオピニオンで「見落とし」を防ぐ
ここで大切なのがセカンドオピニオン(別の医師の意見)の活用です。
たとえば、
- 自分の遺伝子異常に対応する薬はあるのか?
- それは保険適用されているか、自費治療なのか?
- 治験に参加できる病院があるか?
こうした情報をがんの専門施設や、遺伝子医療に強い医療機関でセカンドオピニオンを受けることで、新しい選択肢や方向性が見つかる可能性が高まります。
もちろん、セカンドオピニオンを活用することを主治医に相談する際は「転院したい」という意味ではなく、「より多くの情報を集めて、自分に合う治療を一緒に考えたい」という前向きな気持ちを伝えることが大切だと考えます。
治療戦略は「完治」だけが目的ではない
ステージ4のがんにおいて、治療の目的は「治す」ことだけではありません。
- がんの進行をゆるやかにする
- 副作用をおさえて日常生活を保つ
- 最後まで自分らしく過ごす
こうした目的を含めて、患者さんご自身の「大切にしたいこと」に沿って治療を組み立てることが、いま注目されている考え方です。
遺伝子変異の情報は、こうした治療戦略を立てる上でとても有益です。「自分に効く可能性のある薬がどこにあるのか」、「今の治療とどう組み合わせられるのか」を検討するためのアイテムになります。
「情報を知ること」から
「遺伝子の異常が見つかりました」と聞いたとき、不安になるのは当然です。けれど、そこには「あなたのがんがどうして起こっているのか」、「効果のある薬があるかもしれない」という大切な手がかりが遺伝子パネル検査の結果に含まれています。
その手がかりをどう活かすかは、医師と患者が一緒に考えることだと考えます。
まずは、情報を整理しながら、「今のあなたに合った治療の地図」を探していくことが大切です。