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2025.04.27

がん治療の新しい可能性「遺伝子パネル検査」とは?

がん治療は日々進歩しています。その中でも特に注目されているのが、「遺伝子パネル検査」という検査方法です。この検査では、がん細胞に特有の遺伝子の変化(変異)を調べることで、その患者さんに合ったお薬(分子標的薬)を見つけることができます。

従来のがん治療では、がんの「できた場所」(胃がんなのか、肺がんなのか)をもとに治療薬を選ぶのが一般的でした。しかし、同じ臓器にできたがんでも、人によって遺伝子の変化はさまざまです。そこで登場したのが「遺伝子パネル検査」。一度の検査で100種類以上の遺伝子を調べることができ、患者さんそれぞれのがんの特徴に合わせて、より効果が期待できる薬を見つけるための手がかりとなります。

保険が使えるようになった遺伝子パネル検査

この遺伝子パネル検査は、2019年から日本でも保険適用になりました。保険が使えるようになったことで、以前よりも多くの患者さんが受けられるようになっています。

しかし、現時点では保険のルール上、受けられる人に制限があります。以下のような条件が定められています:

がんの標準治療が終わった方、または標準治療がない方
がんが進行していて、手術などが難しい状態にある方
組織を採取できる状態にあること(※血液で調べる検査もあります)
検査後の治療方針を決める「エキスパートパネル」という専門家会議に参加できる病院であること

つまり、まだ抗がん剤などの標準治療を行っている最中の方や、早期のがんの方は、原則として保険で遺伝子パネル検査を受けることができません。

検査のことを知らないままチャンスを逃してしまうことも

こうした制度上の制限があるため、医師から患者さんに遺伝子パネル検査の話がされないケースもあります。「自分に合う治療薬が見つかる可能性がある」と知らされないまま、選択肢を失ってしまうのは非常に残念ことだと考えます。

たとえば、ある特定の遺伝子変異を持っている場合、その変異に対して効果がある分子標的薬免疫チェックポイント阻害薬を使えることがあります。しかし、その遺伝子変異の有無は、検査をしてみなければわかりません。

現在の制度では、一般的に「標準治療が効かなくなったあと」に遺伝子パネル検査を行いますが、早めに検査のことを知っておくことで、いざというときの選択肢を準備できるのです。

保険外(自費)で受けられる選択肢もある

実は、希望すれば自費診療(自由診療)として、保険外で遺伝子パネル検査を受けることも可能です。費用は高額(約40万円前後)ですが、標準治療中や早期がんの段階であっても検査を受けることができ、将来の治療戦略を立てる材料にすることができます

また、保険適用の検査では調べられない項目を含んだ、より詳細な遺伝子パネル検査もあります。自費診療を選ぶことで、より柔軟に検査と治療の選択肢を持つことができます。

分子標的薬ってどんな薬?

「分子標的薬」とは、がん細胞が持つ特定の遺伝子の異常(変異)や、異常なタンパク質をピンポイントで狙って攻撃する薬です。従来の抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えるため、副作用が大きいという課題がありました。

それに対して分子標的薬は、異常のある部分だけを攻撃するため、副作用が比較的少なく、効果も高いことが期待されます(もちろん薬によって個人差はあります)。

たとえば、有名な例ではHER2という遺伝子に異常がある乳がん患者さんに対して「ハーセプチン」という分子標的薬が劇的に効果を上げたことがあります。このように、「誰に、どんな薬が効くのか」を事前に予測できることは、がん治療における大きな進歩なのです。

あなたに合った治療を一緒に見つけていくために

当院では、がん患者さん一人ひとりに合った最適な治療を見つけるために、遺伝子パネル検査を積極的にご提案しています。公的保険の範囲内で実施できる場合もあれば、自費でのご案内になることもありますが、検査を受けるかどうかを判断するのは、患者さん自身の「知ること」から始まります

「自分のがんにはどんな薬が効くのか」「もっと治療の可能性を広げたい」――そう思われたら、ぜひお気軽に医師またはスタッフにご相談ください。検査を受けるタイミングや方法、費用について丁寧にご説明させていただきます。

がん治療は「選択の時代」です。当院では、今後も患者さんと一緒に考え、歩んでいく医療を目指しています。

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